【弁護士が解説】不動産投資詐欺の典型的な手口と対策方法

不動産投資詐欺の実態とは

不動産投資詐欺とは何か?具体的な説明

不動産投資で詐欺を働く人たちのやり口は大変巧妙ですので、どの話が詐欺で、どの話がまともなのかは、見分けがつきません。ただし、不動産投資詐欺の商品や販売スタイルには、いくつか共通したものがあります。
本記事をご覧になって、一旦立ち止まるようにすれば、大きなトラブル予防に役立ちます。

・物件が実在しない

実際には存在しない物件を、あたかもあるかのような不動産情報を流し、その物件を購入するための手付金を支払うと、そのお金を持ち逃げする手付金詐欺の手法です。

不動産は安いものでも数千万単位のお金が動きますので、手付金として2割の金額をもらえれば、一回で数百万円の詐欺ができます。担当者(詐欺師)がグループで働けば、数千万~億の詐欺被害を出すこともできます。

多くの場合、「人気物件だから手付金だけでも払っておいたほうが良い」「手付金を頂ければ当社で物件を確保します」など、購入希望者の競争心をあおってきます。

不動産購入の際に手付金を支払うことは、マイホーム購入でも普通にあることなので、ある程度の金額を支払うことに心理的な抵抗がないのも、手付金詐欺にひっかかる大きな理由の一つです。

・強引な勧誘と時間制限

購入希望者に時間的な制約をつけることで判断力を低下させ、短期間で自社での購入を決断させようとする手口です。例えば、購入を迷っている、他社と比較したいという方に、以下のような言葉で揺さぶりをかけます。

こんないい物件、このエリアだとここしか無いですよ
これからまだ、4組様をご案内する予定なんです
このように「近いうちに大きなチャンスが失われるかもしれない」という不安に、わざと心理的な圧力をかけ、他社で購入するチャンスを消していきます。

前項の囲い込みと似ていますが、こちらは主に時間に区切りをつけて即断即決を迫ります。本来、投資は情報を十分に検証したうえで、冷静な判断をすべきですが、その考える時間をなくす手法です。

・デート商法

異性と知り合いになってデートを重ね、親密になったところで、不動産の購入をすすめるという、色恋詐欺の一つです。恋愛感情を使って金品を巻き上げるデート商法は、不動産投資以外にも、高額絵画販売、結婚詐欺・海外ロマンス詐欺など多数のパターンがあり、昔からある手口です。

今は恋活・婚活のアプリやサイトも多く、LINEなどのSNSで個人的な関係が成立しやすい環境があるため、昔よりもデート商法は成功しやすくなっています。

担当者(詐欺師)は、こちらの信頼や愛情につけこんできますので、相手への恋愛感情が強いほど断りにくくなります。その結果、不要不急の商品であっても、仕方なく契約をしてしまいます。

現在は、消費者契約法により、学生や新社会人などの「社会経験が乏しい人」がこのような詐欺に引っかかった場合には、クーリングオフ期間後でも契約の取り消しができるようになっています。しかし一般社会人の場合、ケースにもよりますがクーリングオフ期間が過ぎてからの契約取り消しは難しい傾向にあります。

不動産投資詐欺の被害事例

・物件が実在しない

詐欺の手口
良さそうな物件があったので、今までとても親切・丁寧に対応してくれていた担当者(詐欺師)に、物件購入を検討していることを伝えた。すると、人気物件で申し込みが殺到することが予想されるので、手付金を頂ければ弊社からの購入申し込みにして、一定期間だけでも物件を押さえられますと提案をされたので、その人を信用して手付金として400万円を支払った。
その後
手付金を支払った後、1~2回の短いメール連絡があった後、携帯も会社の電話もつながらなくなった。慌てて弁護士に相談に行ったが、手付金は契約前提で支払うものなので、契約書がなければ契約不履行にはならないことがわかり、頭が真っ白になった。

・強引な勧誘と時間制限詐欺の手口例

セミナーで知り合った、未公開物件のみを取り扱う不動産投資会社の経営者からの情報で、物件の情報確認のために、ホテルのラウンジで待ち合わせた。提案された5件のうち2件はだめだったが、3件は気になったので、その場で電話確認してもうと「同じような問い合わせが来ていますが、今この場で、どれかに決めていただければ、押さえられますよ」と言われた。
不動産投資の勉強をしているときに、有能な投資家は判断が早いと書いてあるのを思い出して即決。これで自分も不動産投資家の仲間入りだと喜び、手付金の振り込みをした。担当者は「書類が揃ったら連絡します」ということで、その日はそれで終わりになった。

その後
連絡を待っていたが連絡がこない。不安になって会社に電話をしたが、電話はつながらず、会社の住所に行ってみたら、そのビル自体が存在していなかった。

・デート商法
詐欺の手口例
婚活アプリで知り合った3歳年下の女性(詐欺メンバー)と、何回かデートをした。アプリで結婚生活の条件なども公開していたので、将来のためとして、マンションのオープンハウスを見るデートをするようになり、不動産投資のセミナーにも参加するようになった。「結婚して子供ができたら、育児中に家賃収入があるのは安心」と提案され、彼女との将来のためにと、不動産投資をはじめることにした。
その後
売買契約が完了したあたりから、彼女からの連絡が減り、ある日、LINEアカウントがなくなった。携帯に電話しても出ず、彼女の勤め先に電話すると「そのような社員は弊社にはおりません」と言われ、あれ?と思う。しかし、頭の中には「フラれたかも」ということしかないので、不動産詐欺とは思わなかった。

不動産投資詐欺に遭った場合の対策法

不動産投資の詐欺被害に遭ってしまった場合に頼れる相談先

不動産投資の詐欺被害に遭ったかもしれない、あるいは、悪徳業者からしつこく勧誘されて困っている、などの状況になったら一人で悩まずにすぐに相談しましょう。相談先は主に「消費生活センター」「免許行政庁」「宅地建物取引業保証協会」「弁護士」の4つです。

都道府県や市区町村にある「消費生活センター」
地方公共団体が設置している、消費生活センターは身近な相談先です。被害に遭った方の救済や役立つ情報を提供しています。消費者からの相談を相談員が受け付けて、公正な立場で相談にのってもらえます。

不動産投資詐欺などのトラブルに巻き込まれてしまった場合には、一人で悩まずに、消費者ホットライン「188」に電話をしましょう。最寄りの相談窓口を案内されます。

悪質な勧誘の相談ができる「免許行政庁」
国土交通省では、投資用不動産の悪質な勧誘を受けた場合には、次の4つを記録して担当の「免許行政庁」に連絡するよう求めています。

1.日時
2.勧誘してきた会社名・担当者名
3.宅地建物取引免許番号
4.具体的な状況や様子
また、不動産業者が過去に行政処分を受けていないかどうかを調べることができる「ネガティブ情報等検索サイト」も開設しています。

参考:『国土交通省ネガティブ情報等検索サイト』
不動産会社が所属している「宅地建物取引業保証協会」
宅地建物取引業保証協会とは、所属する不動産会社が取引によって生じた債権の弁済、債務の連帯保証、苦情の解決、研修などを行なう社団法人で、国土交通大臣が指定しています。

現在、全国宅地建物取引業保証協会と不動産保証協会の2つの団体があり、ほとんどの不動産会社がどちらかに所属しています。

そのため、悪質な不動産業者から迷惑な勧誘を受けた場合や、不動産購入のトラブルに巻き込まれた場合は、宅地建物取引業保証協会に「苦情の申出」をして相談に乗ってもらいましょう。

法的なトラブルに対応できる「弁護士」

トラブルに巻き込まれた場合や、法的な手続きが必要な場合には、法律の専門家である弁護士に相談するとよいでしょう。

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